11日12日は三崎の東大臨海実験所に。
ここには関藤守さん(マモさん)と幸塚久典さん(ヒサさん)という2人の技術専門職員がいる。技術専門職員=技官についての詳細は月刊ダイバーの3ヶ月前の記事を読んでいただくとして、この2日間は2人の優れた技官さんと、ウミウシの好きな特任研究員のO森くんが、3人がかりで私の採集につきあってくれた。
今回の採集目的はアレ(論文を発表するまでは公表できない)。しかし例年なら必ずたくさんいるはずのアレが今年はなぜかいない。出ているようなら千葉の<パロパロアクアティック>にも行かなくちゃ、と思っているのだが、千葉でもなぜか出ていない模様。でも例年どおり出ているとの想定で助成金をもらって採集に来ているので、とにかく潜って探さなくては!
ボートを出してもらい、アレのいそうな泥底に。
ヒサさんのフロントロールエントリー(海上保安庁のおにいちゃんがやっていたのを見たことがある)が大変格好よかったので真似をするが失敗し、バックロールともフロントとも違う、言ってみれば横倒しロールとでもいうべきみっともない姿で海に落ちる。でも海になら、どんな格好で落ちても靱帯を切るような怪我はしない。「失敗したぜ、ぐはは」と笑ってすかさず体制を立て直し、船長のマモさんからカメラを受け取って潜降する。
透明度は1mくらい。海底がどこにあるかわからないし、ちょっとでも巻き上げようものならどちらが上かもわからなくなる。久々に体験する激濁の中でアレを探す。
ヒサさんO森くんとはぐれても気にせず、ひたすら探す。
しかしアレはいない。
そのうちアレではなく、アレレ? これは例の属の未記載種ではないの? というものが現れる。
すかさず撮影して採集。
EX後、はしごのないボートに自力で上がれず、ヒサさんとO森くんにマグロの水揚げよろしく引き上げてもらう。
「アレいなかったですねえ・・・」(ヒサさん)
「アレはいませんでしたが、コレがいました。コレは未記載種なので大変うれしいです」(わたし)
「え? コレっていつもいる☆☆☆☆☆☆☆ではないのですか? てっきりソレだと思って撮影するだけで持ってこなかった」(O森くん)
「いや、コレはソレとは違います、なぜなら(以下略)」(わたし)
「へえ~」
ということでアレの代わりにコレを見つけ、大変ご機嫌状態でランチを終えて午後の潜水へ。
午後は沖合に出る。透明度は5mほどあったが、こちらはまったくウミウシがいない。O森くんがヒロウミウシを1個体見つけてくれたが、私などはタツナミガイを見ただけという情けない結果に終わってしまった。
それでも大変ご機嫌なまま、再びマグロの水揚げのようにボート上に引っ張り上げてもらって潜水終了。
飲み会の買い出しにたいへんご機嫌状態でついて行き、宿泊棟の食堂で行われる飲み会にたいへんご機嫌状態で参加する。参加者はマモさんヒサさんO森くんに油壺マリンパーク飼育係の岩瀬さん。
技官さんの海洋生物に対する造詣の深さには驚くものがある。O森くんが最近撮影したものを見せてくれたのだが、何者なのか私にはわからないものも多い。深海ものなどはサッパリわからない。それらことごとくを技官さんらは知っているのだ。
それも「おりゃー」と飲んでいるところに「これ何ですか?」と水を差しても、ほぼ即座に「えーと、それはナントカカントカ」と返答がある。
私など、アルコールがある基準以上体内に入ると、ウミウシの名前ですら出てこなくなるのになぁ。いや最近はしらふでもやばい・・・
飼育係さんにしか聞けないさまざまな話もおもしろく、楽しい楽しい宴ではあったが、たけなわの午後10時には(私だけ)飲むのをやめ、11時にはおひらき。
「なんで今日は飲まないんですかー!」とヒサさんに詰め寄られるが、だって明日も潜るんだもんね。
若い頃は二日酔いでも下痢でも便秘でも、いや恋の病でさえも潜れば治ると豪語して潜っていたが、半世紀を生きてしまった今となっては二日酔いでは潜りません!
ということで12日の話はto be continued.