セグロリュウグウウミウシという和名をめぐって、1ヶ月ほど前にフィリピンツアーの仲間たちとメールのやりとりをした。そのときに書いたメールを、加筆修正ほぼゼロで転載。
お知らせありがとうございます。
諸悪の根元はやっぱりウミウシ図鑑com ですね。前からあのサイトの運営方法は許し難いと思っていましたが、いよいよ怒り心頭です。
それはさておき、日本にいない動物になぜ和名がついているか、についてです。
鳥や蝶、哺乳類などは住んでいる場所がアマゾンだろうがアフリカだろうが、和名がついていますよね。
その動物を研究している日本人の研究者がいると、つくんですよ。
哺乳類と魚類には和名をつける際の規約のようなものがあるらしい(詳しくは知らない)ですが、たいていは研究者が論文で発表する際に和名をついでにつけます。
逆に、研究者の数が少なく世間にも認知されていないマイナーな動物だと、日本にいる動物でも和名はつきません。研究者どうしなら和名なんかなくても学名で話は通じるので。
ウミウシのように日本人研究者の数がめちゃくちゃ少なく、しかし世間で認知されている動物の場合は、需要と供給のバランスが崩れて世間の皆さんはフラストレーションを感じておられるようです。
しかしだからといって、ネットとか、査読の入らない図鑑等で誰もが勝手に和名をつけるのは、やってはいけないことです。
なぜやってはいけないか、『海に暮らす無脊椎動物のふしぎ』に、理由はしっかり書いたんですけどね。
なので私(一応研究者の端くれ)がぼちぼちと論文を書いて和名をつけているわけですが・・・来年あたり、まとめて和名をつけますよ。
Nembrotha chamberlaini はセグロリュウグウにはしません。
N.
chamberlaini が日本にいるかもしれない、との話について。
Gosliner は、今までクロスジリュウグウウミウシの色彩型としてきたウミウシのうち、背面の模様が縦線ではなく斑紋になっているタイプをクロスジリュウグウと分けて
Nembrotha chamberlaini の色彩型としたようです。それで日本にもいるってことになったんですね。
でもそれは間違いだと私は思っています。クロスジリュウグウと
N.
chamberlaini では成体の体サイズ(たいさいずと読みます)が全く違いますから。
Gosliner は日本のウミウシを見ていないため、どうせフィリピン産と同種だろうと高をくくっています。そのためゴスデスレンス図鑑でも明らかな間違いをいくつも侵しています。
Gosliner は分子偏重で、形態を軽視しているからなあ。
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「来年あたりまとめて」が「今年から連載の形で」に変更になったが、とにかく和名命名作業は既に始めております。連休明けには投稿しないといけない。
私としては和名命名なんかより、学名をつける=記載論文を書く仕事のほうを本当はどんどん進めないといけないのだが、記載は和名をつけるより余程慎重に行わないといけない作業なので、なかなか前に進まない。
卒業までには1本投稿できるようにしたいものだ。