『動物系統分類学』はウミウシに限らず動物分類学を志す人なら必ず読まないといけない重要な文献だ。めっちゃ高い本なので私はコピー製本とスキャンPDF で済ませているけど、Yさんは本を持ってる。それだけではなく彼女は『相模湾産後鰓類図譜』はもちろん、なんと『富山湾産後鰓類図譜』まで本を持ってる(ちなみに私はどちらもコピーです)。コピーでも全く問題ないけど、こういうところでYさんのウミウシにかける情熱は普通じゃないよねー、と思うのです。図鑑だけじゃなくて論文を読んで同定しているし。彼女を日本一のアマチュアダイバーだと思う所以はこういうところ。……実は最近もうひとかた男性で、すごい人と知り合えた。そこで最近わたしは心の中でYさんをウミウシ女王(クイーン)、Sさんをウミウシ王(キング)と呼んでいる。
『動物系統分類学』に話を戻すと、この本は折に触れて読んでいるはずなのに、昨日新たにひとつ発見をした。それはcaryophyllidia の日本語について。ラメリウミウシ属やらゴマフビロードウミウシ属やらイソウミウシ属やらの背中にあるトゲトゲした突起のことだ。
この突起について『動物系統分類学』に、「円錐形の小さな感覚器官(sensory knob)を中心に、その周辺を骨片が保護する。これを葉核器官(caryophyllid)という」とあった。
上の図版は『Nudibranch and Sea Slug Identification Indo-Pacific』に掲載されていたcaryophyllidia。日本語では微細突起だの絨毛状突起だのと言われているけれど、ふうん、葉核器官ていうんだ。
でもこの用語、用語として適切かどうか疑問を感じる。たしかに「caryo」 は「核」だし「phyllid」は「葉」なので、間違いではないけど(なお -ia が語尾につくと複数形)、「葉核器官」といって理解できる人がいったいどれだけいるだろう。事実、この用語が出てくるのは『動物系統分類学』の中でもP237の一箇所きりで、あとは「絨毛状の微小隆起」とか「微細突起」だとか。執筆者もしっくりきてなかったんじゃないかしら。
ということで、caryophyllidia の日本語、やっぱり絨毛状突起のままでいこう、と決めたところです。私は決める権限があるので文句を言わないように(笑)。それでも文句を言いたい人がいるかもしれないので、次に書く和文論文にもきちんと書いておこう。
あら、広島が優勝まであと一歩なんですね。今日広島がDNAに勝って阪神が読売に負けると広島優勝だそうな。どこが優勝してもいいけど、阪神は読売には勝ってほしいです。
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